「早すぎた名作」とでも呼ぶべきか。
自衛隊のイラク派遣を予言したかのような序盤の展開は面白いし、雰囲気を最大限に高揚させる演出・映像効果も、クールで自己主張をしない端麗な主人公も新鮮であったには違いない。
だが考えてみれば海外派兵からクーデターへの流れは「機動警察
パトレイバー2 The Movie」へのオマージュともとれるし、「やたら凝った映像演出」も「
エヴァ以降」の影響で当時流行ったものだし、高橋監督の「装甲騎兵
ボトムズ」から引っ張ってきたような自己主張をしない主人公も感情移入ができずにもどかしいだけではないか。
「機動警察
パトレイバー」のレイバーのデザインを手がけた
出渕裕によるリアル系ロボットのデザインはこの作品で頂点を迎えたことは間違いない。輸送機から重機を低空から投下することにインスピレーションを受けたリアルな降下シーンの描写や、
自衛隊との模擬戦闘、米軍の空挺戦車と歩兵戦闘車を近接戦闘で撃破するシーンに唸った視聴者も少なくないだろう。事実、ロボットが現実に存在することに対してこれほどまでの説得力を与えた作品は他にはない。
能という斬新な要素と、穀物輸出モラトリアムに端を発する対米経済戦争、そして右翼思想家の西田やサンジェルマン伯爵を匂わせるファントム、組織の謀略や平安時代からの因縁が魅力的であったことは疑う余地も無い。
だがしかし、この作品は多くの期待と関心の目が向けられた中で、破綻を以って終末を迎える。多くの要素を内包したが故に。
クールな主人公は西田という大きすぎる存在に圧倒されて脇役と化し、平安時代編やユウシロウのクローン等の複線も回収されず、組織の謀略を描かんがためにファントムや脇坂検事は最後までロクな出番もないまま物語は終盤へと突入、能とリアルロボットという相反する自称が無窮の存在・
ガサラキによって1つに集束していくこともなく終了する。
そもそもこの作品の順当な結末は、どう考えても「国際紛争を陰で操るシンボルとの最終決戦」であったはずだし、「ユウシロウが自分の存在が何であるかを知ること」が、彼が自分を戦場の渦中に身を置くことを決意させた最大の動機であったはずだ。例え100歩譲って、中弛(なかだる)みがする中盤以降の、軍事評論家上がりの書いた支離滅裂で稚拙な脚本とシリーズ構成を認めるとしても、あの最終回はあり得ない。
エヴァやナデシコの先例に倣って、劇場版が作れるという淡い不確かな期待に全てを託し、複線と物語の収束をその空想の劇場版に投げ売って、ああいう投げやりな中盤以降が、視聴者をなめきった最終回ができあがったとしか思えない。シンボルとの決戦も無く、対米戦争すら勿論納得の行く形では収集できず、
自衛隊の解体などという沈黙の艦隊にアタマをやられたとしか思えない(高橋は沈黙の艦隊のOVAも監督している)ような戯言を遺して切腹自殺し、ユウシロウはただ
エヴァばりの心理描写でただ「帰りたい」とだけ言って、朝日を背にして笑顔のラストときた。
全てに、全てが個々に魅力的でありすぎたがために、1つの纏まった単体の作品として紡ぐ事もままならなかったのだ。
悪い意味で
エヴァ的な商法の悪影響を受けてしまった、不遇の作品といえる。序盤の展開や後半の政治劇は素直に面白かったことを吐露させてもらうが、広げた風呂敷すら畳めない、畳める見込みが無いのに風呂敷を広げてしまった製作陣には溜息をせざるを得ないだろう。いや、寧ろ僕はこの作品が好きなのだ、そうであるからこそ、この根本的な稚拙さが尚更に惜しくて仕方がないのだ。
今や
自衛隊がイラクへと派兵され、憲法改正を目前に控える今、この作品を商業主義的に
谷口監督がオマージュした
コードギアスが受けているだけに、やはり「早すぎた名作」との評価が妥当なのではないだろうか。
【関連】
【焼き直し】 ますます
ガサラキってる
コードギアスの第2話〜4話れびゅー 【右翼登場】
http://kokubou.blog11.fc2.com/blog-entry-452.html(SEED+エウレカ+
ガサラキ)×反米=
コードギアス ナイトメア≡TA
http://kokubou.blog11.fc2.com/blog-entry-436.html今秋観るアニメを列挙するようなブログの記事ほどつまらないものはない
http://kokubou.blog11.fc2.com/blog-entry-441.htmlアニメレビュー 知られざるハイクオリティアニメ「
ガサラキ」はB級か
http://kokubou.blog11.fc2.com/blog-entry-76.html